総 説

代謝調節における穀物のプレバイオティクスとしての役割 大腸発酵の観点から:ミニレビュー

Anne NILSSON

Department of Food Technology, Engineering and Nutrition, Lund University, Lund, Sweden

 全粒穀物ならびに食物繊維(DF)は,肥満,2 型糖尿病,冠状動脈疾患といった生活習慣病の予防に関して有効であることが知られている。このミニレビューでは,健常者における短期介入試験(1-3 日間)の結果を紹介し,大腸発酵によるメカニズムを介した特殊な DF の代謝効果を支持する。中枢神経系(CNS)刺激情報における食欲調節系の中心にある一つの重要な伝達経路は腸ホルモンと「腸脳軸」を介したものである。また,食欲と代謝調節系のシグナル分子として大腸内発酵により産生される短鎖脂肪酸(SCFA)も含まれる。したがって,大麦やライ麦を用いた試験食品は,耐糖能改善,炎症マーカーの低減,代謝ならびに食欲調節重要な腸ホルモンの増加,ならびに腸バリア機能にもまた有用である可能性がある。本ミニレビューでは,食物,心血管系指標,認知機能,気分との間の密接な関係もまた含まれる。この件に関してライ麦ベース食品は気分パラメーターを改善し,血漿中の脳由来神経栄養因子(BDNF)を増加させた。代謝試験マーカーの有益な効果に不随して,腸内細菌の代謝産物(呼気中の水素や SCFA)濃度が増加し,腸内細菌の構成はプレボテラ属 / バクテロイデス属比が上昇する。さらには,穀物 DF の有益な代謝効果がほとんどみられないか,わずかである被験者の少数のサブグループが存在する。これらの応答性の違いは,少なくとも一部は腸内細菌の構成の違いにより生じると結論づけたが,本メカニズムについてはさらなる研究が必要である。

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