報 文

ラット膵臓消化酵素と小腸二糖類水解酵素の活性に対する粘性食物繊維摂取の影響

池上幸江1,細田晶子1,東泉裕子2,梅木美樹3,山田和彦4

1大妻女子大学家政学部
2聖徳大学人文学部
3大分大学教育福祉科学部
4(独)国立健康・栄養研究所食品保健機能プログラム

 粘性のある食物繊維の消化器官への影響を,膵臓の消化酵素と小腸粘膜の二糖類水解酵素への影響を中心として検討した。実験には5週齢SupragueDawley系雄ラット,1群6~7匹を用い,4種の食物繊維:セルロース,ペクチン,タマリンドガム,アルギン酸ナトリウムをProsky食物繊維として4.78%含む飼料で19日間飼育した。飼育終了後,消化器官の重量を測定し,膵臓及び十ニ指腸と空腸粘膜の消化酵素の比活性を測定し,次のような結果が得られた。
 粘性のある食物繊維を投与した群では,体重増加が抑制される傾向があり,アルギン酸ナトリウムでは有意に低下した。
 粘性のある食物繊維を投与した群では,小腸と盲腸の相対重量が有意に増加した。胃重量はアルギン酸ナトリウム群で,結腸重量はペクチンとアルギン酸ナトリウム群で有意に高くなった。
 膵臓のプロテアーゼ活性は,アルギン酸ナトリウム群で有意に高くなった。十二指腸粘膜の二糖類水解酵素活性は食物繊維による差はみられなかったが,空腸では粘性のある食物繊維群では低くなった。とくにペクチン群での影響が顕著であり,粘性とは相関がみられなかった。
 粘性のある食物繊維は消化器官の肥大や膵臓消化酵素活性の上昇をもたらすが,小腸粘膜の二糖類水解酵素比活性に対してはむしろ低下させた。また,食物繊維の小腸粘膜の二糖類水解酵素に対する影響は粘性との相関がなく,粘性のある食物繊維の影響は小腸と他の消化器官では異なることが示唆された。


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