報 文

柿葉食物繊維の化学的性状と組織化学的観察

楠喜久枝1,原 孝之1,藤田 守1,石田 裕2
松隈美紀1工藤慶太3,三成由美1,徳井教孝4
田所忠弘5,前川昭男5,印南 敏5*

1中村学園大学栄養科学部栄養科学科
2東京農業大学短期大学部栄養学科
3名寄市立大学保健福祉学部栄養学科
4産業医科大学産業生態科学研究所
5東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科

 柿葉に含まれる食物繊維(DF)の性状をより明らかにするために組織化学的および分析化学的な手法を用いて検討した。柿葉はほぼ等量のセルロース,ヘミセルロースおよびリグニンを含むが,それから得られたDF画分の中,不溶性ヘミセルロース画分の主要な糖は含有割合順にアラビノース(39.8%),キシロース(26.9%),ガラクトース(16%)であった。水溶性ヘミセルロース画分はほぼ同程度のマンノース(35.4%),ガラクトース(30.7%)とアラビノース(13.5%)の外少量の単糖を含んでいた。標識レクチンを用いた柿生葉の組織化学的観察は細胞壁を構成する多糖(ヘミセルロースとペクチン質)および糖タンパク質中の特定の糖残基あるいは糖鎖と末端アミノ酸との結合がそれぞれ固有のレクチンによって認識されたことを示した。糖組成と組織化学的所見の結果から,不溶性ヘミセルロース画分はアラビノースを主鎖とし,キシロースとガラクトースなどを側鎖に持つヘテロ多糖の一種に属し,一方,.水溶性ヘミセルロース画分はその大部分がペクチン質で占められるどころからマンノース,アラビノースなどの糖を側鎖に持ち,カラクツロナンを主鎖とするヘテロ多糖に属するものと推測された。柿葉粉末中の水溶性酸性多糖としてウロン酸含量の異なる2つの画分の存在を認めた。これらの画分はペクチン質に属し柿茶液中の成分として利用され得ると推測した。これらの結果は柿葉細胞壁のマトリックス構造に関わる構成因子の中ヘミセルロースおよびペクチン質の性状について幾つかの有意義な情報を提供したものと考える。


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