化学誘発大腸癌の発生に対する影響を大麦ふすまと小麦ふすまについて比較検討した。3週齢のFischer344系雄ラット80匹を予備飼育したのち、次の4群に分けた。 (1) 生理食塩水―大麦ふすま食 (2) 1,2-dimethylhydrazine(DMH)―大麦ふすま食 (3) 生理食塩水―小麦ふすま食 (4) 1,2-dimethylhydrazine(DMH)―小麦ふすま食。 初期の4週間は化学誘発大腸癌発生のためのイニシエ―ション期間として標準飼料(5%Cellulose食)で飼育し、その間(2)群と(4)群には化学誘発剤DMHを週2回皮下注射した。(1)群と(3)群には生理食塩水を同様に皮下注射した。その後の33週間をプロモ―ション期間として(1)群と(2)群は大麦ふすまを含む高脂肪食で、一方(3)群と(4)群は小麦ふすまを含む高脂肪食で飼育した。化学誘発大腸癌の発生率は(2)群53.3%,(4)群50.0%で大麦ふすまと小麦ふすまの影響は同じ程度であった。本実験で用いた大麦ふすま,小麦ふすまには不溶性食物繊40.7%,49.3%と多く含まれていたにもかかわらず腸内通過時間は短縮されなかった。また、化学誘発大腸癌の発生と盲腸内pHとの関係、ならびに盲腸内の短鎖脂肪酸濃度との関係も認められなかった |