報 文

水浸ストレス潰瘍ラットの胃液分泌に及ぼす大麦の影響

吉澤みな子1,2,中野 長久2,中村 尚夫1

1子園大学栄養学部栄養学科
2大阪府立大学農学部応用生物化学科

 本研究では,ストレス潰瘍発生予防効果のあるドラフト分級大麦粉末が,ラット水浸ストレス潰瘍発生過程の胃液分泌に及ぼす影響について検討した。その結果:1)コントロール群および大麦(10%)添加群ともに実験開始より順調な成長を示し,飼料中の大麦の添加量が10%程度の場合,ラットの成長や飼料摂取量に差は認められなかった。2)大麦(10%)添加群はコントロール群と比較して,水浸ストレス負荷4時間目より強い潰瘍抑制効果を示した。3)胃液酸度は両群において水浸ストレス負荷後2時間で上昇するものの,大麦(10%)添加群では4時間目において有意に低値を示した。4)大麦(10%)添加群では血清ガストリン濃度は有意に低値を示すものの,これが直接減酸効果をもたらさないことが示唆された。5)胃液のペプシン活性は,コントロール群においてストレス負荷2時間目に上昇傾向を示すものの,大麦(10%)添加群では有意に低値を示し,大麦によるペプシン活性の減少が認められた。
 これらの結果より大麦による水浸ストレス潰瘍抑制は,酸やペプシンなどの攻撃因子の減少が,その一因と考えられた。しかしそれが短時間であることから,防御因子が関与している可能性も推察された。

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