報 文

重合度の異なるイヌリンの食物繊維としての効果

寺部 茜1,三嶋智之2,柘植治人1,3
和田 正4,早川享志1

1岐阜大学大学院農学研究科
2岐阜大学連合農学研究科
3くらしき作陽大学食文化学部(現所属)
4フジ日本精糖株式会社

 近年スクロースからの合成が可能となったイヌリンについて,その重合度の違いによる生理効果の比較検討を行った。はじめに安全摂取量(下痢をしない摂取最)の検討のため,平均重合度の異なる2種類のイヌリン(IN8,IN18)を,添加量を変えて(0,2.5,5,10,20%)ラットに与え,2週間の飼育を行った(9群,n=5)。その結果10%以上の添加では下痢を引き起こし,飼育期間中に回復が見られなかったことから次の実験ではイヌリン添加量を5%とした。この飼料条件で4週間の飼育を行った後解剖を行い,大腸内発酵産物含量,糞排泄量,脂質含量について調べたところ,イヌリンの摂取によって盲腸および糞中のSCFAの組成が変化し,特にn-酪酸の増加が顕著であったため,大腸の健康増進に有効であることが示唆された。またイヌリン摂取は血漿コレステロールに影響を及ぼさなかったものの,トリグリセリドを低下させたため,高脂血症や脂肪肝などの生活習慣病の予防に有効である可能性が示唆された。


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